FastSeries ブログ

ナレッジ

2025/06/27

放棄呼とは?発生する原因とリスク、改善方法を詳しく解説

  • IVR
  • コンタクトセンター
  • リスク管理
  • 顧客満足
  • LINE(ライン)
  • Twitter
  • Facebook

コンタクトセンターにおいて「放棄呼」は、応対の機会を失う重大な課題です。顧客満足度の低下や業務効率の悪化にもつながるため、発生要因や対策を把握し、改善する必要があります。
この記事では、放棄呼の意味や原因、放置するリスクのほか、効果的な対策を解説します。

放棄呼とは顧客からの電話がオペレーターにつながる前に切れること

放棄呼とは、顧客が電話をかけたにもかかわらず、オペレーターにつながる前に切断されてしまう状態を指します。これは、通話前キャンセルや自己切断とも呼ばれ、コンタクトセンターにおける重要なKPIのひとつです。

放棄呼はオペレーターの対応前に発生するため、対応履歴に残らないケースが多く、実態の把握が難しい事象といえます。しかし、顧客体験や業務効率に及ぼす影響は大きいため、企業にとっては決して見過ごせない課題です。

放棄呼はあふれ呼と混同されがちですが、あふれ呼は、電話回線がすでに埋まっていて着信自体ができない状態です。放棄呼同様に顧客満足度の低下につながるため、企業としてはいずれも削減すべき対象となります。


■放棄呼とあふれ呼の違い

放棄呼 あふれ呼
定義 オペレーターにつながる前に顧客が電話を切ること 回線が埋まっていて着信自体ができないこと
発生タイミング 着信後、オペレーター接続前 着信前、回線混雑時
主な原因 待ち時間の長さ、IVRの煩雑さなど 同時着信数が許容量を超えている
対応記録 対応履歴に残らないことが多い 着信そのものが発生しない
KPI上の扱い 放棄呼率として算出・管理する システム上で「あふれ呼」として管理する

あふれ呼について、詳しくはこちらをご確認ください。
あふれ呼を回避すべし! その理由と改善方法とは?

放棄呼率の算出方法と改善指標の考え方

放棄呼を管理・改善するためには、まず放棄呼率の把握が欠かせません。放棄呼率とは、総着信件数に対してどの程度の割合で放棄呼が発生しているかを示す指標であり、コンタクトセンターの運用状況を評価する重要なKPIのひとつです。

放棄呼率の計算式は、次のとおりです。

<放棄呼率の計算式>
放棄呼数(件) ÷ 総着信件数(件) × 100 = 放棄呼率(%)

例えば、1日に1,000件の着信があり、そのうち50件が放棄呼だった場合、50÷1,000×100の計算で、放棄呼率は5%となります。

コンタクトセンター業界では、放棄呼率の目安として5〜8%が一般的とされています。ただし、業種や問合わせ内容、顧客層によって許容範囲は異なり、2〜3%以下を理想とする企業もあります。自社の運用実態や顧客の期待値を踏まえ、目標水準の設定が重要といえるでしょう。

また、放棄呼率は一度測定して終わりではなく、月次や四半期単位で定点観測し、改善施策の効果検証やフィードバックが求められます。特に繁忙期やキャンペーン期間中は変動が大きくなるため、継続的なモニタリングが必要です。

放棄呼が発生する原因とタイミング

放棄呼が発生する背景には、顧客側の状況やコンタクトセンターの対応体制など、複数の要因が絡み合っていることが少なくありません。特に、電話がつながる前に顧客が離脱するタイミングには一定の傾向があり、それを理解すれば、有効な対策を立てられます。

放棄呼が発生する主な原因とタイミングを、下記で5つ紹介します。

<放棄呼が発生する原因とタイミング>
・待ち時間が長い
・IVR(自動音声応答システム)が複雑
・時間帯による混雑
・ほかに問合わせられる手段がない
・顧客が急いでいる


待ち時間が長い


電話をかけてきた顧客が最も離脱しやすいのは、通話開始までの待機時間が長い場合です。特に明確な待ち時間の案内がなかったり、進捗がわからなかったりすると、顧客は不安や不満を感じて電話を切ってしまう傾向があります。

このケースでは、ピーク時間帯の混雑に対応できていない場合や、スタッフ数が不足している場合に放棄呼が増加しやすくなります。


IVR(自動音声応答システム)が複雑


IVR(自動音声応答システム)の案内が複雑な場合も、放棄呼が発生しやすくなります。例えば、「◯◯の方は1を、△△の方は2を…」といった案内が長すぎたり、選択肢が多くてわかりづらい場合、顧客は途中で混乱したり、面倒に感じたりして電話を切ることがあります。

特に高齢者や急いでいる顧客にとってはストレスの原因となりやすく、結果として放棄呼につながるでしょう。


時間帯による混雑


顧客同士の架電タイミングが重なると、待ち時間が長くなって放棄呼の発生率が高まります。昼休み前後や業務終了直前の時間帯は、顧客も「今のうちに」と電話をかけるため、混雑が発生しがちです。

こうした特定の時間帯に着信が集中する傾向がわかっている場合は、リソースを確保するなどの対応が必要です。


ほかに問合わせられる手段がない


電話以外に問合わせ手段が用意されていない場合、待ち時間の増加やIVRの滞留が発生し、放棄呼が増える要因となります。すべての顧客からの問合わせが電話に集中し、回線が混雑しやすくなるためです。

近年では、放棄呼対策としてWebチャットやLINEなどの多彩なチャネルを取り入れる企業も増加しています。


顧客が急いでいる


「今すぐに解決したい」「時間がない」という状況の中で電話をかけている顧客にとって、わずかな待ち時間や操作の煩雑さも離脱のきっかけになります。特にトラブルや不具合など、緊急度の高い問合わせでは、少しの遅れが放棄呼の大きな要因になります。

放棄呼によって生じる企業へのリスク

放棄呼は単なる電話の切断ではなく、企業にとってさまざまなリスクをもたらす重大な課題です。顧客満足の低下や売上損失、さらにはブランドイメージの毀損にもつながるため、早期の対策が求められます。

ここでは、放棄呼によって発生する代表的な3つのリスクを解説します。

■放棄呼によって生じる企業へのリスク
risks-arising-from-abandoned-calls.png


顧客満足度の低下と機会損失


放棄呼が発生すると、顧客は「問合わせに応じてもらえなかった」「電話で待たされて時間を無駄にされた」という不満につながります。これにより、リピート率やロイヤルティが下がり、最終的には顧客離れにつながってしまうかもしれません。

また、購入意欲の高い顧客や重要なクレーム対応の機会を逃してしまうと、売上が損失するおそれもあります。つまり、顧客満足度と収益の双方を損なうリスクがあるといえます。


ブランドイメージや信頼性の低下


「電話がつながらない」「問合わせしづらい」「顧客を大切にしてくれない」といった印象は、企業に対する信頼性を大きく損ないます。現代の消費者は、SNSや口コミサイトを通じてネガティブな体験を拡散する傾向があり、それがブランドイメージの毀損につながるおそれもあります。

こうした事態は顧客の競合他社への流出を招く可能性があり、結果として顧客基盤の縮小や企業価値の低下につながるリスクも高まります。


オペレーターへの負担と離職率の上昇


放棄呼が多い環境は、オペレーターにも負荷がかかります。オペレーターにとって「対応できなかった」「顧客に不満を抱かせてしまった」という精神的ストレスや、混雑状況に左右される業務の不安定さが原因で、モチベーションの低下や離職につながります。

また、シフト調整や勤務時間が読めないと、ワークライフバランスの悪化も招きかねません。職場環境の改善にも、放棄呼削減は不可欠です。

オペレーターのモチベーションについて、詳しくはこちらをご確認ください。
オペレーターのモチベーション向上4つのカギとは?

放棄呼を削減するための具体的な5つの対策

放棄呼の発生は、顧客満足度や業務効率に深刻な影響を与えるため、企業としては早急に対応すべき課題です。ここでは、放棄呼を効果的に削減するために実施すべき5つの具体的な対策を紹介します。いずれも単独でも効果を発揮しますが、組み合わせて運用すれば、より高い効果が期待できるでしょう。

<放棄呼を削減するための具体的な5つの対策>
・チャットボットやFAQの整備
・IVRの見直しと設計改善
・WFM(ワークフォースマネジメント)の導入
・オペレーターのスキルアップと教育体制の強化
・問合わせ手段の多様化による分散対応


チャットボットやFAQの整備


放棄呼を削減するための対策として、チャットボットやFAQの整備が挙げられます。電話をかける前に顧客が自己解決できるチャットボットFAQといった環境を整えれば、問合わせ件数そのものを分散でき、放棄呼の削減につながるでしょう。特にAIチャットボットは24時間対応が可能なため、営業時間外や急ぎの要件にも柔軟に対応できます。

また、よくある質問をWeb上で一覧化しておけば、顧客が自身で解決できる確率が高まり、放棄呼の発生を抑えられます。


IVRの見直しと設計改善


放棄呼を削減するための対策として、IVRの見直しと設計改善も効果的です。IVRが複雑だったり、選択肢が多すぎたりすると、顧客はストレスを感じて離脱しやすくなります。顧客の目的に応じて、最短経路でオペレーターにつながる設計であれば、顧客をストレスなく、最適な窓口にスムーズに誘導できるでしょう。


WFM(ワークフォースマネジメント)の導入


放棄呼を削減するには、曜日や時間帯ごとの着信予測にもとづいて、適切なシフト設計を行うWFM(ワークフォースマネジメント)の導入も欠かせません。繁閑差に応じた柔軟な人員配置が可能になり、顧客の待ち時間を短縮し、放棄呼の抑制につなげられます。

特に予測データにもとづいた人員計画は、効率的なリソース配分とオペレーターの負担軽減にも直結するため、働きやすさにもつながるでしょう。

WFMについて、詳しくはこちらをご確認ください。
WFM(ワークフォースマネジメント)とは? オペレーター配置の最適化で叶うコスト軽減と品質維持


オペレーターのスキルアップと教育体制の強化


オペレーターのスキルアップと教育体制の強化も、放棄呼削減の対策として効果的です。研修やロールプレイングを実施して顧客対応力を高めれば、通話の回転効率が上がり、待ち時間の短縮につながります。また、対応品質が安定すると、顧客満足度も向上し、結果として放棄呼の抑制が可能です。

オペレーター育成について、詳しくはこちらをご確認ください。
オペレーター育成で応対品質を向上!これだけは押さえたい5つのポイント


問合わせ手段の多様化による分散対応


放棄呼を削減するために、問合わせ手段を多様化し、分散させることも大切です。LINE、SNS、Webチャットなど、顧客が使いやすい問合わせチャネルを複数用意しましょう。特に若年層を中心に、電話以外でのサポートを好む傾向があるため、多様なチャネルの導入は顧客ニーズにも合致します。問合わせ手段が増えれば、電話の混雑も緩和され、放棄呼の減少につながります。

コンタクトセンターのチャネルについて、詳しくはこちらをご確認ください。
コンタクトセンターのチャネルを最適化してCXを向上させよう!

放棄呼を防ぐための施策を社内に定着させる3ステップ

放棄呼削減に向けた対策を講じたとしても、一時的な施策で終わってしまっては根本的な解決にはつながりません。継続的に成果を出すためには、現場での定着と改善サイクルの構築が不可欠です。

ここでは、放棄呼対策を社内にしっかり根づかせるための3つのステップをご紹介します。

<放棄呼を防ぐための施策を社内に定着させる3ステップ>
1.現状を分析し、課題を可視化する
2.小さく始めて検証・改善を繰り返す
3.社内での理解促進と関係者を巻き込む


1.現状を分析し、課題を可視化する


まずは、通話ログや時間帯別の放棄呼データをもとに、どのタイミングやチャネルで放棄呼が発生しているのかを明確にする必要があります。加えて、オペレーターや現場スタッフの声をヒアリングし、数値では見えにくい運用上の課題も把握しましょう。定量・定性の両面から現状を可視化すれば、改善につながります。


2.小さく始めて検証・改善を繰り返す


FAQの拡充やチャットボットの設置など、比較的実行しやすい施策から着手しましょう。FAQやチャットボット導入後は、IVRCRMとの連携も視野に入れて、対応の一貫性や効率性を高めることが重要です。

施策の効果は、放棄呼率や顧客満足度などのKPIを使って継続的に観測し、PDCAサイクルで改善を進めます。


3.社内での理解促進と関係者を巻き込む


放棄呼の削減は、カスタマーサポート部門だけではなく、経営層やIT部門、営業部門など全社的な連携が必要です。各部門で目的意識を共有し、改善施策に一体となって取り組めば、よりスムーズな定着が期待でき、現場での運用負担を最小限に抑えつつ、長期的な成果の創出が可能になります。

放棄呼を削減するなら「FastSeries」の導入がおすすめ

放棄呼の削減には、業務体制の見直しに加えて、専用のシステムの導入が非常に効果的です。テクマトリックスが提供する「FastSeries」は、コンタクトセンター業務の効率化と顧客体験の向上を同時に実現できるソリューションとして、多くの企業に選ばれています。ここでは、放棄呼の削減に貢献する「FastSeries」の特長をご紹介します。

■FastSeriesのラインナップ
FastSeries-2025-new-lineup.png


顧客対応チャネルの統合で、応答までの導線を短縮できる


FastSeries」の各製品は、ボイス・ノンボイスの各チャネルを持つため、顧客が最も使いやすい手段でスムーズに問合わせられます。これにより、電話に集中していた問合わせを他チャネルへ分散させ、電話回線やオペレーターの負荷を軽減できます。

電話・チャット・メールなどの複数チャネルを統合して顧客・履歴管理のできる「FastHelp」や、オペレーターにつながる前の一次対応を行うボイスボット「FastVoice」、AIチャットボットや後処理を効率化する対話要約機能をもつ「FastGenie」など、それぞれの業務課題に応じた導入が可能です。


FAQ・チャットボットの導入で、電話以外の自己解決手段を提供できる


FastSeries」では、FAQシステムやチャットボットも揃えており、当社での導入もサポートできるため、顧客が電話をかける前に自己解決できる環境を整えられます。これにより、問合わせ件数そのものを減らせ、放棄呼の発生リスクも大幅に低下します。

さらに、有人チャットや電話対応との連携も可能です。顧客の利便性を損なわずに、効率的な対応体制を構築できます。


放棄呼率や応答率の見える化で、継続的な改善が可能になる


FastSeries」には、KPIを定量的に可視化するためのダッシュボードやレポート機能が備わっており、各数字の発生状況や要因をリアルタイムで把握できます。

データにもとづいた施策の立案や、改善後の効果検証が可能となり、継続的な品質向上と運用最適化につなげられます。数値での裏付けがあるため、社内の合意形成や改善提案もスムーズに進められるでしょう。

放棄呼の削減に苦慮しているなら、ぜひ「FastSeries」各サービスの導入をご検討ください。

コンタクトセンターの管理と業務効率化を実現するコンタクトセンター向けCRMシステムは「FastHelp
FAQ作成の業務効率化を支援するFAQナレッジシステムは「FastAnswer
WebサイトやLINE上で顧客対応を自動化するチャットボットは「FastBot
自社希望に合わせたセルフカスタマイズができるAIボイスボットは「FastVoice
自己解決チャネルへ適切に誘導するビジュアルIVRは「FastNavigation
チャットボットとの連携もスムーズな有人チャットは「FastText
リアルタイム対話要約、回答支援、FAQ作成支援、VOC抽出ができる生成AI機能群は「FastGenie

まとめ

  • 放棄呼は、顧客がオペレーターにつながる前に電話を切ってしまう現象であり、コンタクトセンターにとっては見逃せない重要なKPIといえる。放棄呼が増えると、顧客満足度の低下や売上機会の損失、さらにはブランドイメージやオペレーター環境への悪影響など、企業全体にさまざまなリスクが生じる。
  • 放棄呼を防ぐための施策を社内に定着させるには、まず現状を分析し、課題を可視化させ、FAQの拡充やチャットボットの設置など始めやすい施策から導入して検証・改善を繰り返すことが重要。社内での理解を促進させるためには、各部門で目的意識を共有し、改善施策に一体となって取り組むことも大切。
  • 放棄呼を削減するには、単なる数値改善ではなく、顧客体験の向上と企業の信頼確保につながる戦略的な取り組みが必要。FastSeries」のような包括的なソリューションを活用し、電話以外の自己解決手段を提供しながら、対応改善を継続的に続けることが重要。

    fastanswer-faq-request-documents.png

人気記事ランキング

おすすめ記事

製品詳細資料をご希望の方はこちらからまとめてご請求可能です。

Consulting

価格・導入に関するご相談、資料請求は以下よりお問合わせください。