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レポート

2022/06/03

【基本編】 今求められる、新しいナレッジの活用法

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コンタクトセンターの運用や、ナレッジマネジメントのベストプラクティスとして高い注目を集めている「KCS(ナレッジ センター サービス)」。なんだか一見、難しそう…?
ナレッジマネジメント、つまりナレッジ運用そのものを変えていくこのKCS手法について、基本から実践まで3回のシリーズにわたってFastちゃんがレポートする新シリーズ「ナレッジマネジメント手法「KCS」とは」がスタート。

初回である本記事では【基本編】として、KCSの認定や普及を行っているHDI-Japan代表の山下氏に、KCSについて基本から分かりやすく解説いただき、まとめています。KCSが生まれた背景や「なぜ今、KCSが求められているのか?」という理由をひも解きながら、KCSの特徴、導入メリットなどについてご紹介します!

speaker

HDI-Japan代表取締役CEO

山下 辰巳 氏

ファイザー株式会社及び株式会社ヤナセにて、社内ヘルプデスク、社外向けサポートセンターを構築。その後米国HDIに留学しHDI国際標準化委員会メンバーとして、数々の国際サポートスタンダードの作成にあたった。2001年にHDI-Japanを設立し、アジアで最初のHDI認定オーディタとなり、国際的スペシャリストとして海外からの各種要請にも応えている。https://www.hdi-japan.com/

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FastSeriesの宣伝マン(見習い中)

Fastちゃん

2020年10月よりFastSeriesの新宣伝マン(見習い)に就任。一人前の宣伝マンを目指し、FastSeriesについて日々勉強中。人の話を聞くのが大好きで好奇心旺盛で真面目な性格だが、ちょっぴりせっかち。質問時の口癖は「ズバリ〇〇ですか?」。好きな食べ物は餃子。

KCSが生まれた背景と日本での注目度

KCS(ナレッジ センター サービス)は、企業の資産であるナレッジに注目した一連の実践プロセスと方法論です。1990年代半ばに、ナレッジがうまく活用できないと悩む多くの米国のIT企業などが、NPO団体「サービスイノベーションコンソーシアム」を設立。約10年もの期間、多額の投資と実証実験を繰り返し2003年に完成しました。

日本でKCSが脚光を浴びはじめたのは、いまから3~4年ほど前のこと。HDI-Japanが主催するKCSのトレーニングコースが突然、満員になりはじめたのです。当時はちょうど、FAQシステムAIチャットボット といったお問合わせのセルフサービス(お客さまが疑問を自己解決すること)が話題を集めるようになった頃で、多くの企業がセルフサービスへの取り組みを開始したものの、「システムにお金をかけてもうまくいかない」という悩みを抱えていました。
ナレッジコンテンツのつくり方や管理の仕方そのものに問題があるのでは?」という課題に気づいた人々が、KCSのトレーニングコースに殺到し始めたのです。

  • ズバリ!ここがPOINT
    • コンタクトセンターには「簡単に解決できない、難しい質問」が寄せられるように

      「スマホで調べて、自分ですぐに解決したい」というお客さまのニーズと、コンタクトセンターの努力によって、簡単な問題は企業が用意するFAQサイト (いわゆる「よくある質問」サイト)などセルフサービスで解決できるようになりました。

      一方、コンタクトセンターには自己解決できないような「難易度の高い問合わせ」が寄せられるようになり、これまでのナレッジマネジメント方法では、お客さまの問題解決が難しくなってきたというのも、KCSが注目を集めるようになった背景です。

ナレッジマネジメントの重要性とKCSの特徴

KCSはこれまでのナレッジマネジメント手法と何が違うのでしょうか。

従来から、ナレッジコンテンツは、主にナレッジ管理の専門家が作成していました。ナレッジ作成を主たる業務とする専門家の視点から見て「完璧なナレッジ」をつくるわけなのですが、実はここに落とし穴があったのです。問題を抱えているお客さまが求めているのは「完璧な答え」ではなく、「いま起こっている問題を解決するためのソリューション」です。つまり、お客さまには「完璧なナレッジ(=知識データベース)」ではなく、「いま目の前の問題を解決するためのナレッジ(=ソリューションデータベース)」が必要とされています
例えば、ナレッジ管理の専門家はパソコンの画面を「ディスプレイ」と書くかもしれませんが、お客さまは「画面」や「スクリーン」と言ったり、「テレビ」と呼んだりするかもしれません。お客さまが「画面」「スクリーン」「テレビ」で検索しても「ディスプレイ」と書かれたナレッジコンテンツはヒットせず、問題の解決方法は見つかりません。従来のナレッジマネジメントでは、こうしたことが頻繁に起こってしまうわけです。

こうしたことを踏まえると、実はナレッジコンテンツは今までのように専門家が時間をかけて完璧なナレッジをつくるよりも、常にお客さまと接しているオペレーターが素早く作成してこそ、使えるものになると言えます。
このナレッジマネジメント手法を実現し、問題解決の質と生産効率を大きく高めてくれるのがKCSなのです。

ではここで、KCSを導入した場合の、コンタクトセンターでの「作業の進め方」を具体的に見ていきましょう。

    • ズバリ!ここがPOINT
      • ナレッジコンテンツを常に検索しながらお問合わせに対応

        まず、オペレーターは常にナレッジコンテンツを検索できるシステム(FAQシステムなど)を開いた状態で応対業務を開始します。お客さまからお問合わせがあると、その内容についてすぐにナレッジを検索して、「お客さまが陥っているのは、どのような状況なのか」「解決策は何なのか」を探します

      • 複数回検索を行うのがポイント

        KCSの場合は解決策を見つけるために、複数回検索をかけていくのがポイント。例えば問合わせ内容について(発生状況・頻度・製品やサービスの名前など)、解決策について(解決日時・ナレッジ作成者など)、などあらゆる角度から解決策を探していきます。これは問題が発生した状況や環境によって、あらゆる解決策が考えられるからです。

      • オペレーター自らがナレッジを追加、修正、記録していく

        ➁までの作業で解決方法が見つかった(既知の問題だった)場合は、それをお客さまに提示します。お客さまの問題が解決できればCRMシステム などの応対履歴管理システムに解決ナレッジを記録して対応が終了です。
        ここで、解決方法(参照したナレッジ)に修正を加えた方がいいと判断できる場合は、対応したオペレーター自らナレッジコンテンツの修正や修正提案を行います。
        また、ナレッジが見つからなかった(未知の問題だった)場合は、SVへのエスカレーションなどを通じて問題を解決し、それを新たなナレッジコンテンツとしてFAQシステムなどに登録あるいは登録提案を行います。
        ※併せて、ナレッジコンテンツごとに誰がいつ作成・更新・閲覧したかを記録していきます。

        ここでのポイントは、オペレーターは常にナレッジを検索することを第一ステップにすること(記憶や経験に頼らない)、そしてナレッジコンテンツをオペレーター自らが作成・更新・公開をすることです。

コンタクトセンターにおけるKCS導入のメリット

KCSには、これまでのナレッジマネジメントにはない大きなメリットが3つあります。どんなメリットがあるか見ていきましょう。

  • ズバリ!ここがPOINT
    • お客さまにとって使えるナレッジコンテンツが、スピーディーに公開できる

      これまでのナレッジマネジメントでは、お問合わせがあった際にナレッジに解決策がない場合、専門家が各所への確認をとりながら時間をかけて検証し、ナレッジコンテンツとして完璧なものを公開するため、公開したころにはお問合わせのピークを過ぎてしまうという問題点がありました。

      KCS_image1.png
      図1:従来のナレッジマネジメント(ナレッジを公開する頃には問合わせのピークが過ぎてしまう)

      KCSでは、初回のお問合わせ時にナレッジを公開し、複数回お問合わせがあったナレッジは都度ブラッシュアップされていくので、お問合わせのピーク前にナレッジを公開するスピーディーさがメリットとなります。また、そのナレッジを公開コンテンツとして、スピーディーにお客さま向けサイトでの公開やチャットボットで活用することが可能で、それらはお客さまにとって「使える」ナレッジとしてセルフサービスの効率を上げることもできます。

    • 重複作業から解放され、生産性が向上する

      KCSでは誰かが対応したことのある問題はナレッジが公開されているので、スムーズに解決策を検索できることができます。

      KCS_image2.png
      図2:KCS(ナレッジをスピーディーに公開することで重複作業が減少)

      前に対応した担当者のナレッジを使って対応することができるため、重複作業(コンタクトセンターの作業の60%以上は重複作業という調査結果もあります)を大幅に減らすことができ、コンタクトセンター全体の生産性が向上します。
      また、オペレーターは単純で重複作業の多い応対業務から、お客さまの問題をナレッジへ昇華させるナレッジ作成者(=ナレッジワーカー)に役割が変化します。クリエイティブな業務はモチベーション向上にもつながるでしょう。「コンタクトセンター」から「ナレッジセンター」に部門名も変わっていくかもしれません。

    • あらゆる部署で応用が可能

      コンタクトセンターに限らず、人事、経理、営業、社長室など、あらゆる部署でナレッジを活用できることも、KCSを利用する大きなメリットです。
      お客さまの情報がつまった非常に貴重なナレッジデータベースが構築でき、得られた膨大な情報を分析することで、新しい製品開発やサービスを生み出す際にも活用することができるのです。

Fastちゃん、レポートを終えて…

Fast_chan_01.pngFastちゃん

  • FAQサイトやチャットボットといったセルフサービスの普及によって、難易度の高いお問合わせがコンタクトセンターに寄せられ、従来型のナレッジデータベースでは問題解決ができなくなっていること。そして、新しい時代に合ったナレッジマネジメントとして、KCSが求められているという背景がよくわかりました!
  • KCSでは前に対応した担当者の知恵(=ナレッジ)を利用して応対業務ができるので、オペレーターは重複作業から解放される。ナレッジを蓄積していくことでオペレーターの膨大な重複作業が減り、生産性が高くなるのは大きなメリットですね!

お客さまからのお問合わせの難易度が高くなってきた今、企業の資産であるナレッジを効果的に活用していくことが重要であることがわかりました。でも、どうやってKCSを実行すればいいのか…?
次回は【プロセス編】と題して、KCSにおける一連の流れを象徴する「ダブルループプロセス」について、解説します。

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