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2022/11/24

シニアへの電話応対でオペレーターが意識すべきポイントとは?

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カスタマーサポートのマルチチャネル化が進み、チャットやメールなど様々なデジタルチャネルの利用が浸透する一方、シニア世代においては電話によるお問合わせのニーズが他の世代に比べるといまだ、高い傾向にあります。シニア世代との会話の進め方について、たとえば「お客さまから聞き返されることが多く、応対時間が長くなりがち」など苦慮しているオペレーターも多いのではないでしょうか。

今回は、そんなシニア世代の特徴を改めて考えながら、コンタクトセンターがシニア世代に提供すべきCXと対策を、特に「電話」応対に注目して解説します。

シニア世代の特徴

本記事ではシニア=リタイア世代という前提で、高年齢者雇用安定法で定年年齢の下限とされている60歳以上(2022年現在で1962年生まれ)をシニアとしています。

テクマトリックスが実施したWebアンケート(※1)によると、企業への問合わせに利用したことがあるチャネルとして「電話」の選択率が30代では69.7%だったのに対し、60歳以上では82.6%と、世代が上がるにつれてデジタルチャネルよりも電話での問合わせを好む傾向があることがわかりました。

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図1「あなたが企業に問合わせをする際に利用したことがある方法を教えてください」結果(世代別)

また、総務省の家計消費状況調査(※2)によると、シニア世代のネットショッピング利用割合は年々上昇しているものの、20206月時点で31.2%。30代の70%以上と比べて依然低い割合であることから、シニア世代は人を介さないデジタルチャネルのサービス利用に不慣れあるいは不安があり、実店舗や窓口での対面購入を優先する傾向が伺えます。

このように、シニア世代におけるデジタル活用は徐々に浸透はしてきているものの、他世代に比べまだハードルが高く利用率が上がっていない現状にあることがわかります。コンタクトセンターにおいても、「電話でのお問合わせは比較的シニア世代が多いな」と実感している方も多いのではないでしょうか。

電話がシニアにとってメインの問合わせ手段である現状において、シニアからのお問合わせに電話で応対する際は、シニアならではの身体的な特徴も考慮すべきでしょう。たとえば、人間は耳の老化で聴力が低下すると、次のような加齢性難聴の症状が顕著になります(※3)。

①高音部が聞き取りにくくなるため、相手が大きな声で話していても高い周波数の言葉が脱落し、言葉の聞き分けが難しくなる。

②無声子音(カ行、サ行、タ行、ハ行)が聞き取りづらくなり、会話での聞き間違いや聞き直しが増える

③耳で聞いた内容を脳で処理して理解する能力が低下し、早口だと聞き取りづらくなる。

こうした加齢に伴う身体機能の変化は聴力だけではなく、認知や記憶の部分にも見られます。もの忘れによってスムーズに会話が進まなくなったり、専門用語や難しい言葉が理解しづらいケースもあります。

シニアへの電話応対で配慮すべきこと

シニア世代の電話応対へのニーズが依然として高い中、期待されるCXを提供するには下記のようなことへの配慮が求められます。

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  • 聞き取りやすさに配慮した話し方や言葉選び

    シニアの聴力の衰えを考慮し、落ち着いた声のトーンを意識しながら、言葉と言葉をはっきり区切って話し、早口になりすぎないよう聞き取りやすさを意識することが大切です。自分の声が高齢者にどう聞こえるか疑似体験できるトレーニングツールもあるので、あわせて活用すると応対改善の気づきを得やすいでしょう。

    また、発声・発音のトレーニングを重ねたり、会話のテンポを相手に合わせるなどを意識して傾聴力を高めることも、対シニアに限らず話し方のスキル向上につながるのでおすすめです。さらに傾聴のテクニックとして、相手の話の中から重要な言葉を繰り返して「こういうことですか?」と真意を確認するようにすることも、自分の考えの言語化に困っているお客さまに対して効果的です。

  • 生産性よりも顧客満足を優先した応対

    シニアへの応対でATT短縮など生産性にとらわれて話を急ぎすぎると、記憶や認知の影響で会話がスムーズにいかず、結局は応対時間が長引いてしまうこともあります。そこで意識したいのは、きちんと相手の話を聞くこと。傾聴を基本姿勢とした丁寧なカスタマーサポートに徹し、質問を重ねながらお客さまの抱える問題を的確に特定し解決へと導けば、自ら対話をコントロールして話の脱線を防ぎつつ顧客満足度の向上が期待できます。

  • デジタルチャネルの操作方法を教える手段を用意して「電話」で啓発

    シニアのお問合わせに丁寧に応じることが基本ではあるものの、コンタクトセンター全体の業務効率や生産性向上を考慮すると呼量の削減も課題のひとつ。そこでシニアに対しても、お問合わせの電話を通じてデジタルチャネルの利用や自己解決を促すなどの施策を少しずつ進めていきたいところです。

    シニア世代は特に、インターネット上のシステムや手続きの操作自体がわからない方が多いので、操作方法の解説動画の公開やそれをフォローアップする教室や専用相談窓口(コンタクトセンターはもちろん店舗でも)を設けたり、印刷用マニュアルをWebサイト上に用意しておくなど、デジタルチャネル利用のハードルを下げる施策も並行して行うと効果的です。

    さらに、普段の電話応対を通じて、シニアが電話を好みデジタルチャネルを敬遠する原因(例えば、ホームページのここがわかりづらい、検索してもヒットしない、マニュアルの文字が小さいなど)を探るようにすれば、シニアのデジタルシフト促進につながる改善策が見つかるかもしれません。

    また、「テキスト」入力よりも「声」での会話を好むシニアには、デジタルチャネルの中でもビデオチャットボイスボットは親和性が高く、活用を検討するとよいでしょう。

シニアからの電話によるお問合わせは、今後も一定の割合で寄せられることが予想されます。電話での応対時は、シニアの身体的あるいは心理的な特徴を十分に理解した上で、お客さまに寄り添った応対の実践に努めてはいかがでしょうか。

まとめ

  • シニア世代にとって、「電話」はその他のデジタルチャネルよりも問合わせ手段としてニーズが高い傾向にある。
  • 電話応対の際は、シニア世代の加齢性難聴や認知力・記憶力の低下など身体的な特徴を踏まえ、落ち着いた声のトーンでゆっくり話し、聞き取りやすさを意識することが大切。また、傾聴を基本姿勢とした丁寧な応対でスムーズに解決へと導きたい。
  • 呼量削減というコンタクトセンター全体の課題の解決のため、シニアにとってハードルになりがちなWebの操作方法の説明窓口を設けるなどのフォローを並行して行い、シニアにデジタルチャネルの利用や自己解決を促す施策も進めたい。

※1:テクマトリックス株式会社によるアンケート概要
【アンケート名称】企業に問合わせをする際に利用したことがあるチャネルに関する意識調査(2022年7月~8月)
【実施期間】2022年7月22日(金)~8月1日(月)
【実施方法】Web
【有効回答者数】653名
<3つの世代グループ>※下記の年齢は、2022年に誕生日を迎えた歳とします。
沈黙の世代/ベビーブーマー世代(1964年以前の生まれ):58歳~
X世代(1965年~1980年の生まれ):42歳~57歳
ミレニアル世代/Z世代(1981年~2000年の生まれ):22歳~41歳

※2:総務省統計局. “新型コロナウイルス感染症で変わるネットショッピング-家計消費状況調査の結果から-”.総務省統計局. 2020-09-07. https://www.stat.go.jp/info/today/162.html, (参照 2022-08-05)

※3:日本老年医学会雑誌第57巻第4号. “加齢性難聴の病態と対処法”.J-STAGE. 2020-05-29. https://www.stat.go.jp/info/today/162.html, (参照 2022-08-05)

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