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2021/04/27
いまさら聞けないAHT。
実はコンタクトセンター運営好循環のカギ!?

コンタクトセンターにおいて、引き続き高い関心を集める「生産性向上」。昨今のコロナ禍を受けて、その傾向はさらに加速しています。では、この「生産性向上」を測るためにはどのような指標があるのでしょうか。今回は「AHT」について解説します。
AHTとは
「AHT(Average Handling Time)」とは、コンタクトセンターにおけるお問合わせ1件あたりの対応・処理時間の平均値のことで、「平均処理時間」と訳されます。たとえば電話でのお問合わせ対応の場合、お客さまからかかってきた電話を取って、問合わせやご意見をヒアリングし回答、切電後はそれらを応対記録として専用システムなどに入力し、必要があれば関連部署へのエスカレーションを行います。この一連の作業を終えて、次の電話を取るまでにかかる時間の平均値がAHTです。
さらに、AHTは2つに分けられ、お客さまからかかってきた電話を取ってから切るまでの応対時間を「ATT(Average Talk Time:平均通話時間)」、応対後にお客さまからのヒアリング内容をまとめて次の電話を受けるまでの時間を「ACW(After Call Work:平均後処理時間)」と呼びます。
たとえば、あるコンタクトセンターで、お客さまからの電話による問合わせ応対に平均して10分、電話を終えてから問合わせ内容をまとめてシステムに入力し、報告してから次の電話を受けるまでに平均して15分かかっていれば、ATT(10分)+ACW(15分)=AHT(25分)となるのです。
AHTを管理するとなぜ好循環が生まれるのか

顧客満足度向上という視点からはATTの最適化を、生産性向上という視点からはACWの短縮化を行いたいものです。それらをあわせた数値であるAHTが改善されれば、企業においてはコンタクトセンターという組織の業務効率化が進んだという評価につながります。では、具体的にはどのような好循環を生むのか、みていきましょう。
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生産性の向上につながる
AHTを人員1人あたりの生産性と考えた場合、1時間の間にかかってきた問合わせの件数に対して、AHTが10分であれば6件処理できることになりますが、AHTが20分になると3件しか処理できないことになります。生産性という観点からみると、お客さまからの問合わせ件数とコンタクトセンターの人員数が同じであれば、AHTが短いほうがより多く応対できることになります。
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コスト削減につながる
AHTが短ければ、1人あたりのお客さまにかける時間が短くなるので、その分通信費が抑えられます。また、「1.生産性の向上につながる」と同じ前提で1人あたりの生産性が上がれば、現状より人数を減らしても応対ができるようになるため、人件費も削減されます。結果として、コンタクトセンター、ひいては組織全体の運営コストの削減につながるのです。
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顧客満足度の向上につながる
お客さまがコンタクトセンターへ電話をかける際、オペレーターへつながるまでの待ち時間、さらに、回答を得られるまでの所要時間が長くかかることは、お客さまがストレスを感じる一大要因です。AHTが短くなることで、お客さまの待ち時間も、回答を得られるまでの所要時間も短くなるため、お客さまのストレス要因が減ることになり、結果として顧客満足度が上がります。
AHTの効率化を図るためには
そんな、コンタクトセンター運営のカギとなるAHTを効率化させるためには、AHTを構成する要素であるATTとACWを分けて考えることが必要です。ATTとACWのそれぞれに対策を採り、AHTの効率化につなげていきましょう。
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ATT改善のためには?
ATTは、お客さまによってばらつきがある部分。回答しやすい内容であることも、厳しいご意見であることもあります。適切な応対をするためには、相応の時間をかけることも必要になってきます。ATTに求めるべきは最適化。お客さまの意図をくんだ丁寧な応対をしたためにATTが長くなっても、最終的にAHTを短縮できるケースもあります。お客さまそれぞれに最適な対応ができるよう、日々受ける問合わせ内容を分析して、より質の高い応対を心掛けていくことが大切です。
しかし、コンタクトセンターの環境を変えることなく、オペレーターだけにこれを求めていては、過剰な負担がかかり、応対品質の低下やオペレーターのストレス増を引き起こしてしまう恐れがあります。最近では、お問合わせ内容の高度化・多様化が進み、複雑なお問合わせも多いので、一概にATTが短ければ短いほど良いとは言えませんが、AHTを基に人員配置やチャネルの見直しを行い、ATTの最適化を行うことが必要です。
コンタクトセンターの管理者は、トークスクリプトやFAQシステム、人員配置で運用面を見直したり、IVRやチャットボットなど、オペレーターが応対するまでのプロセスを簡略化できるシステムを導入することで、さらなる最適化を目指せるようにしましょう。 -
ACW改善のためには?
ATTとは異なり、電話を切った後の処理部分を指すACWは、オペレーターあるいはコンタクトセンター管理者主導で短縮することができる部分です。応対履歴をCRMシステムに登録すれば、お客さま応対の品質担保や問合わせ内容のデータ分析も行えます。オペレーターが後処理作業をしやすいシステムになっているか、業務フローを体系化し誰にでも分かりやすいかなど、オペレーター個々のスキルに依存しないCRMシステムを構築することが、センター全体の生産性向上にかかわってきます。
さらに、業務フローにあわせたCRMシステムのカスタマイズや、CTI、音声認識・テキスト要約ソリューションなどとの連携で、オペレーターの入力手間を減らせることができれば、より一層のACW改善が図れるでしょう。
それでもACW改善の兆しがみえない場合は、「タイピングや会話を文章化するスキルが低い」「後処理の遅さに自覚がない」など、オペレーターの事務処理スキルが追い付いていないことも考えられます。事務処理スキルのボトムアップを図るために、ACWが長いオペレーターを中心に研修を行ったり、ACWが短いオペレーターからコツを学んだりして、個人の意識に変化をもたらすことも有効です。
AHTを最適化することによって、時間に余裕が生まれ、その時間を別の応対に充てることで応対件数の増加や応対品質の向上も期待できます。これによってオペレーターのモチベーションもアップし、顧客満足度が向上して売上・営業成績向上につながっていくことも、AHT管理で生まれる「好循環」と言えるでしょう。
まとめ
- コンタクトセンターの生産性の高さ・低さを示す指標のひとつが「AHT」。
- AHTを上げるためには、「ATT」と「ACW」それぞれに分けて対策を講じる必要がある。
- 応対件数の増加や応対品質の向上、ひいてはオペレーターのモチベーションアップにつながるなど、AHTを最適化させることで、好循環が生まれる。