導入事例
建設・不動産・住宅機器
リンナイ株式会社様
オンラインショップの顧客対応センターを設置。
小規模ながら数値管理で「貢献度」を可視化
- 導入製品・ソリューション
- FastHelp4
クラウド型
- 目的
- VOC活用
- 情報分析・共有化
- 生産性向上
今回お話をお伺いした方
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管理本部eビジネス推進室
室長福本 啓史 氏
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管理本部eビジネス推進室
主査亀島 直人 氏
リンナイはe ビジネス事業でダイレクト販売Web サイト「R.STYLE」を開設。その顧客窓口としてEメールだけでなく電話対応も重視したコンタクトセンターを設置している。小規模ながらも数値管理を徹底し、指標に基づく運営を行うことで「貢献度」を可視化。今後、事業拡大とともにCRM 活動を本格的に展開し、収益貢献を高めていこうとしている。
Web サイト「R.STYLE」を開設し部品中心にダイレクト販売を伸ばす
リンナイは顧客対応窓口として「お客様センター」を東日本と西日本の2拠点に設置し、顧客からの修理依頼受付と各種問い合わせに対応している。修理依頼については全国のサービスショップ(修理代行店)と密接に連携し、受付後直ちに手配を行い、現場のサービスマンと直接連絡を取って迅速・的確なサービスを行っている。また、修理情報だけでなく問い合わせについても重要案件については関連部署に情報をフィードバック。さらに、これらの情報を集計・分析して、問題点に対する取り組み状況を各部門から報告する「全社品質協議会」を毎月実施するなど、品質向上に努めている。これとは別に、顧客との新たなダイレクトコミュニケーション手段として拡充しつつあるのが、オンライン窓口だ。同社は2006年からeビジネス事業を立ち上げ、ダイレクト販売のWebサイト「R.STYLE(リンナイスタイル)」(http://www.rinnai-style.jp)を同年10月に開設した。ここで取り扱っているのは同社製品の交換部品全般と関連するお手入れグッズ・料理グッズ。アイテム数は4900以上におよぶ。製品(機器)の販売チャネルはあくまで流通業者を経由した間接販売がメインだが、交換部品や消耗品については基本的に流通業者で在庫は持たず、その都度メーカーに問い合わせて調達しているので、顧客(エンドユーザー)の手元に届くまでに4日ほどかかる。これに対してネットでは最速で翌日に届けることが可能になり、顧客にとって利便性が高く、また流通業者としてもアフターフォローの効率化が図れることから、3者(顧客・流通業者・リンナイ)共にメリットのあるツールになっているようだ。そして、このダイレクト販売サイト運営を支えているのがオンラインショップ窓口で、eビジネス事業を主管する本社のeビジネス推進室内にコンタクトセンターを設置して、3サイト(自社サイト、楽天市場、amazon)からの問い合わせ対応(電話・Eメール)だけでなく、電話での部品注文受付や出荷・返品オペレーション、メルマガ配信など多岐にわたる業務を行う顧客コミュニケーションセンターとして機能している。
オンラインショップ窓口の概要
「ネットビジネスなので、お客様からの問い合わせ対応についてEメールオンリーでカバーする方法もありましたが、スタート時から電話での対応も行いました。ネット単独のビジネスでない限り、製品および企業のブランドを維持・向上するためにも電話チャネルは不可欠という考え方に基づいています。実際に電話による問い合わせ件数は多く、あらかじめ電話チャネルを用意しておいて良かったと実感しています。とくに、ご購入前の相談もかなり多いことから、電話によるリアルタイムな対応によってお客様の不安や迷いが解消できれば、実購入につながる機会も増えます」(福本氏)
顧客との継続的な関係構築とVOC活動推進の2つの役割
オンラインショップ窓口の役割は大きく分けて2つある。1つは、顧客との継続的な関係を構築するための拠点として機能することだ。
顧客との継続的な関係を構築
「当社製品の多くは耐久消費財なので、最初のご購入から次回までの期間が長くなります。このスパンを交換・消耗部品や関連商品の販売とアフターサポート、ご提案やメルマガ配信などを通じて、お客様との繋がりを保ち、関わりを増やしていくことが重要です」と福本室長は言う。そしてもう1つの役割は、顧客からの問い合わせやアンケート内容をまとめ、「お客様の声」として社内に情報発信することで、サイト運営改善や商品開発、品質改善に役立てる、いわゆるVOC活動の推進だ。現在、サイト上で行っているのは商品レビュー(購入商品に対する要望・不満などを収集)と購入後アンケート。同アンケートは商品が顧客の手元に届いた当日にWebフォームのアンケート依頼をEメールで送り、商品やサイトの使い勝手、窓口の対応などについて記入してもらうもの。「回答率は約10%と高く、しかもフリーコメント欄への書き込みも多くいただけていることから、この貴重な"お客様の声"を当コンタクトセンター内では業務改善やモチベーションアップに活かしています」(亀島氏)
SaaS型CRMパッケージを活用。小規模だからこそ数値管理を重視
コンタクトセンターのITシステムをみると、運用の効率化を図るため、2008年9月にWebメール処理のパッケージを導入(ASPサービス)した。しかし、顧客一人ひとりとのやり取りを時系列で見れない、問い合わせと顧客を紐付けできないといった課題が、eビジネス事業が軌道に乗るにつれて顕在化した。そこで、より機能を充実させ、電話対応を力点にして新たなパッケージへ切り替えることにした。選定に際しては、機能・操作面で
- Eメール回答と電話履歴入力を同一インタフェースでできる
- 顧客軸でコンタクト履歴が確認できる
- 過去の履歴やFAQ が検索しやすい
- 評価指標を細かく計測できる
といった点を考慮。また、Webフォームや外部システムとのデータ連動の容易さなどの拡張性を加味して、ベンダー3社の製品に絞り込み、最終的にテクマトリックスのコンタクトセンター・CRMパッケージ「FastHelpSaaS版」を採用した。「当初はオンプレミス型も検討しましたが、eビジネス事業はまだ小規模で発展段階であったことから、コストパフォーマンスの良さとSaaS型でもカスタマイズ性に優れるFastHelpに決めました」(亀島氏)
2010年6月の要件定義から3カ月という短期間でシステムを構築し同年9月に本稼働した。併行して従来システムからデータを移管した(なお、メールアンケートとメルマガ配信にはそのまま従来システムを用いている)。新システムの導入を契機に、応答率だけでなく平均対応時間や一次解決率/初回解決率、問い合わせ率といった指標管理に基づくセンター運営をより徹底して行うようになった。問い合わせ率とは注文件数に対する問い合わせ比率を測るもので、低いほど顧客が自己解決するeセルフサービスが機能している証明になる。この指標に基づきFAQ改善やサイトの購入導線の工夫、効果的な画像の取り込みなどを行い、同時に応対品質向上にも努めた結果、約2年前は電話で40%以上、Eメールで30%台だった問い合わせ率が現在は電話が14%台、Eメールが6%台に減ったという。
今後の本格的なCRM展開に伴い売り上げ貢献度も可視化へ
eビジネス推進室はオンラインショップ窓口のコンタクトセンター機能をより拡充して、今後本格的なCRM活動を展開していく考えだ。例えば、問い合わせ履歴と受注履歴を一元管理できるようにすることで、購入後の問い合わせ対応効率化と、購入サポート後の成約(成果)状況をもっと詳しく把握するようにし、オンラインショップ窓口の売り上げ貢献度を"見える化"していく。さらに、システム内製指向の強い同社にあって、同推進室では各種のクラウドサービスを活用して、それをシームレスに連携させていくことで、多様化する顧客行動に柔軟に対応できるCRM基盤を構築する構想も描いている。
R.STYLE によるe ビジネス事業の進展に伴い、この構想を一つひとつ具現化していく意向だ。
(記事および図:Computer TELEPHONY 2012. 2月号より抜粋)